「アルテミス計画」は月をめぐる壮大なプロジェクト!日本も参加する計画の内容は?

宇宙飛行士と月

映画『アポロ13』でよく知られるアポロ計画から50年。
現在進行中の月面有人探査計画が「アルテミス計画」です。
アポロ計画とは進め方や方針が異なるアルテミス計画とは、どんな特徴があるのでしょうか。
日本が果たす役割も含めて、詳しく解説します。

1. アルテミス計画とは

アルテミス

月の女神として描かれたアルテミス(1658年グエルチーノ作)

アルテミス計画とは、2019年にアメリカのNASA(米航空宇宙局)が発表したプロジェクト。アポロ計画以来の、月面有人探査計画のことです。

2020年10月に、アメリカを含めた8か国が「アルテミス合意」に署名しました。アメリカ、カナダ、イギリス、イタリア、オーストラリア、ルクセンブルク、UAE、そして日本が、その8か国です。

ちなみに「アルテミス」とは、ギリシア神話に登場する12の主神のひとり。太陽の神アポロンとは双子とされる月の女神です。初めて人類が月面に降り立ったアポロ計画に続くプロジェクト、という意味が「アルテミス計画」という名前に込められています。

アポロ計画からアルテミス計画まで半世紀もあいてしまったのは、1980年代以降、アメリカの宇宙計画がスペースシャトルを中心とした地球近傍を対象にしたプロジェクトが中心であったためです。38万キロも離れた月への宇宙計画は、近年のテクノロジーを駆使するアルテミス計画で再開することになりました。

アルテミス計画の最終目的は月面基地建設。Ⅰ~Ⅴまで、いくつかのステップに分けられてスケジュールが組まれています。

2022年末に開始されたアルテミスⅠ計画では、無人の月周回試験飛行に成功。
今後は有人の試験飛行や、女性による月面着陸が計画されています。

2. アルテミス計画の主なミッション

アルテミス計画は、順調にいけば2029年にすべての目的を完遂するといわれています。
アルテミスⅠからⅤにいたる計画、それぞれの目的やスケジュールを解説します。

アルテミスI

本来は2022年8月29日に開始予定だったアルテミスⅠ。宇宙飛行船オリオンの有効性を確認することを目標にしたプロジェクトです。しかしエンジンの不具合のため、計画が遅れました。

実際に開始したのは、2022年11月。宇宙飛行船オリオンを搭載した新型のロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」が打ち上げられました。
オリオンは分離に成功。月面の約100kmまで近づき、月周回起道を飛行しました。無事に地球に帰還し、宇宙飛行の有効性を実証しました。

アルテミスII

当初は2024年に実施するはずだったアルテミスⅡは、現状では2025年9月に開始予定となっています。アルテミスⅡの目的は、有人の月周回の飛行です。
アポロ計画では3人の宇宙飛行士が乗り込みましたが、アルテミス計画では4人。10日間をかけて月の裏側まで回り。さまざまなミッションを行う予定になっています。

アルテミスIII

アポロ計画以来、50年以上を経て人類が月面着陸することがアルテミスⅢのミッション。2026年9月の実施を予定しています。

月着陸船は、実業家イーロン・マスク氏が率いる「スペースX」社が開発中です。有人宇宙船「スターシップ」完成を目指して、スペースX社では地上実験や高度約10kmまでの飛行や着陸実験をたびたび行っています。

アルテミスⅢ計画で宇宙飛行士が着陸するのは、月の南極域。着陸候補地は9か所にまで絞られました。
月にはたくさんのクレーターがありますが、その内側には1年を通して日光が届かない「永久影」が存在します。永久影には、水が氷の状態で存在すると推測されていて、アルテミスⅢのミッションには、こうした場所の調査などが含まれています。

アルテミスⅣ

2028年に実施予定のアルテミスⅣでは、宇宙ステーション「ゲートウェイ」の建設が開始されます。ゲートウェイのモジュールをオリオン宇宙船で運搬し、組み立てていく予定。

アルテミス計画における2回目の月面着陸も目標のひとつです。
4人の宇宙飛行士のうち2人が、ゲートウェイを経て月着陸船に乗り換え、月面着陸を目指します。太陽物理学や生命科学に関する実験、資源調査等を行った後、ゲートウェイでオリオンに再び登場し、地球へ帰還することがミッションです。

3. 国際的協力と女性の活躍がアルテミス計画のキーワード!

月面

宇宙開発の歴史を切り拓くアルテミス計画。
さまざまなプロジェクトやミッションが目白押しのアルテミス計画のキーワードは、国際的協力と女性の活躍です。
アポロ計画には見られなかったアルテミス計画の特徴を見てみましょう。

40か国超が参画するアルテミス計画

アメリカが国家の威信をかけて進めたアポロ計画と違い、アルテミス計画は参加国の技術が結集することになります。2024年11月現在、アルテミス計画に加盟している国は40を超えました。

アポロ計画では、アメリカの国家予算が無尽蔵につぎ込まれた経緯がありました。当時の世界はソ連とアメリカを中心にした冷戦状態。アメリカはなにがなんでもソ連にひけをとりたくないという思いがありました。

21世紀に入った今、宇宙政策もグローバル化が進んでいます。各国がもつ技術や人材を統合させて行われるのが、アルテミス計画です。

期待される女性の活躍

2026年に予定されているアルテミスⅢ計画では、確実に1人の女性が月面着陸することになっています。

あらゆる分野で女性の進出が著しい近年の風潮を反映して、アルテミス計画でも女性の活躍が期待されています。
女神アルテミスの名を冠したこの計画はまさに、そうした世の中の趨勢の象徴となりそうです。

4. アルテミス計画を支えるさまざまな技術

世界のテクノロジーを結集させて行われるアルテミス計画。
具体的にどんな技術が登場するのでしょうか。
話題になっている技術について解説します。

ロケット・着陸機

官民一体となって進められているアルテミス計画では、宇宙産業企業の活躍が顕著。
スペースXの月着陸船だけではありません。

ロッキード・マーティン社とボーイング社の合併会社ユナイテッド・ローンチ・アライアンスによる新型ロケット「ヴァルカン」や、ベンチャー企業アストロボティック・テクノロジー社の着陸機「ペレグリン」が使用される予定です。

ロボット・ローバー

宇宙空間の作業で必要不可欠なもの、それがロボットです。その中でも月面を移動する車をローバーと呼びます。

ロボットについては、日本の宇宙開発ベンチャー「ダイモン」が開発した「YAOKI(ヤオキ)」が月に送られる予定。「七転び八起き」から命名されたこのロボット、月面の複雑な地形で横転しても再び立ち上がることを表しています。

世界最小サイズのヤオキは、重さわずか498g。NASAの商業月輸送システム(Commercial Lunner Payload System通称CLPS)によって、月に輸送される予定です。

3Dプリンティング

3次元の物体を形作る技術3Dプリンティングも、アルテミス計画を支える要素のひとつ。

NASAは、月面における建物の建造やインフラの設置計画のための3Dプリンティング技術開発を、アメリカの企業に依頼しました。

すでにアルテミスⅠ計画において、打ち上げ時のロケット・ブースターには3Dプリンティングが活用されています。

プラダ製の宇宙服

プラダ製の宇宙服

プラダ公式インスタグラムより

アルテミス計画の船外活動で使用される宇宙服をデザインしたのはプラダ。8時間の船外活動にも耐えられるプラダの宇宙服、カジュアルラインのプラダ・スポーツをほうふつとさせる赤いラインが特徴的です。

5. 計画の中の日本の役割

2020年のアルテミス合意にサインした日本。
計画のなかでどんな役割を果たすのでしょうか。

日本の技術

日本が世界に誇る技術力は、アルテミス計画でいかんなく発揮されます。先にご紹介した月面ローバーYAOKIのほか、宇宙開発スタートアップ企業アイスペースが「HAKUTO-R」のミッションを開始。民間独自の月面探査プログラムを展開することになっています。

またJAXA(宇宙航空研究開発機構)は、小型月着陸実証機SLIMによってピンポイント着陸などの研究を行っています。ゲートウェイ構想では、補給に関する技術も提供する予定です。-R」のミッションを開始。民間独自の月面探査プログラムを展開することになっています。

日本の人材

日本はこれまでに、優秀な宇宙飛行士を育成してきました。
現在JAXAに所属する宇宙飛行士は7人、そのうち女性は1人です。

アルテミス計画で重要な役割を果たす日本は、少なくとも2人の宇宙飛行士を月面での活動に参加するという調整が行われています。
どんな活躍をしてくれるのか今から楽しみです。

6. まとめ

アポロ計画から半世紀、再び人類が月面に立つことを目的にスタートしたアルテミス計画。アメリカをはじめ、世界中の国々が協力して計画が進行しています。

官民一体となったアルテミス計画では、最新技術をベースに未来に向けたさまざまなミッションが行われる予定。
21世紀の宇宙開発の新たな歴史、ぜひ注目してみてください。

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