月をデータで知る!誕生から人類との関連も含めた基本情報
太陽と並んで、人類とはなじみの深い月。月を巡る神話や物語は多く、宇宙に興味がない人にとっても月は親しみやすい天体です。
月の定義や大きさは、学校で学習しただけで忘れてしまった人も多いのではないでしょうか。
月をデータでご紹介しつつ、月の誕生や満ち欠けの謎、人類との関連も含めて解説します。
1. 月とは
「月」とは、地球の唯一の「衛星」を指します。衛星とは、惑星の周りを引力によって楕円軌道を描きつつ公転する天体です。つまり、月は地球の引力により地球の周りを回る天体なのです。
地球から見ると、太陽に次いで明るい天体が月です。月の公転周期がほぼ1カ月であるため、1年は12カ月に分けられています。
2. 月についてのデータ
月についての具体的な数字を以下に示します。
・地球からの距離
地球から月までの距離は、約38万4,400kmです。これは地球に最も近い天体です。イメージしにくいですが、東京からパリまでの距離が約1万kmであることを考えると、月までの距離がイメージしやすくなるでしょう。
・月の大きさ
月の直径は約3,476kmです。地球の直径が約12,742kmですから、月は地球の約4分の1の大きさです。
・月の重力
月の重力は、地球の約6分の1です。重力は物体の重さに影響を与える要因なので、同じ質量の物を月に持っていくと、その物の重さは地球の6分の1になります。
・月の温度
月の温度は、110℃から-170℃までと非常に温度差が激しいのが特徴です。大気がないため、太陽光が当たると110℃まで上昇し、光が当たらない部分は-170℃まで下がります。その寒暖差は280℃に及びます。ただし、これは月の表面温度であり、地下1mの場所では-30℃ほどに保たれているとされています。
3. 月の動きについて
地球から見える月は、満月になったり三日月になったり、形を変えます。これは月の動きによるものです。
・月の動き
月も地球と同じように、自転(天体が軸を中心に自分で回転すること)と公転(天体がほかの天体の周りを回ること)をしています。月が1回自転するのにかかる時間は約27日で、地球の周りを1周するのにも約27日かかります。
月は地球の衛星ですが、太陽の影響も受けています。月、太陽、地球の位置によって月の輝く部分が変わるため、私たちが見る月の形も変わります。このサイクルは「朔望月(さくぼうげつ)」と呼ばれます。
月と太陽が同じ方向にあり、月が輝かない状態を「新月」と呼びます。新月から約3日後、西の空に「三日月」が見えるようになり、さらに1週間後には半分だけ見える「上弦の半月」となります。新月から14.765日後には、月が太陽と反対側に位置するため「満月」になります。
・月と満潮、干潮の関係
潮の満ち引きは月と太陽の引力によって起こります。太陽は月よりも地球から遠いため、月の引力の影響がより大きく、潮の満ち引きは主に月によって引き起こされます。
月の方向にある地球の海水は、月の引力によって引っ張られ満潮になります。しかし、月の反対側の地域でも満潮となります。これは、月の引力が作用しない場所では、地球の遠心力によって海水が引き伸ばされるためです。また、月と直角の位置にある海域では干潮が起こります。
月と太陽の引力が重なると、干満の差が最大となり「大潮」となります。大潮は、新月と満月の1~2日後に一般的に起こるとされています。
・なぜ月の裏を地球から見えないの?
月は自転と公転の周期が同じため、地球からは常に同じ面しか見ることができません。1959年にソ連のルナ3号が月に向かうまでは、月の裏側は未知の世界でした。
4. 月の誕生、4つの説
月の誕生については、いまだに定説はなく、いくつかの説が提唱されています。約45億年前に誕生したと考えられる月について、以下の4つの誕生説が存在します。
① 分裂説
月は地球の衛星ですが、もともと同じ天体から分裂して生まれたという説です。この説は19世紀以降に存在していましたが、力学的な困難や最近の月岩の分析結果から、否定されることが多くなっています。
② 兄弟説
この説は、地球と月が同時に形成されたというもので、双子説とも呼ばれます。地球が太陽系の物質を取り入れて形成されるのと同時に、月も同様に形成されたとされますが、分裂説と同じく否定されることが多いです。
③ 捕獲説
もともと太陽系の別の惑星だった月が、たまたま地球の重力にとらわれて衛星になったという説です。しかし、この説は力学的な説明が難しいとされています。
④ 巨大衝突説
現在、主流とされているのがこの説です。約45億年前、誕生間もない地球に火星ほどの大きさの天体が衝突し、その衝突によって飛び散った破片が集まって月が形成されたというものです。ある研究では、月はわずか1か月ほどで形成された可能性があるともいわれています。
5. 月の表面について
日本では「月にはうさぎがいる」というメルヘンチックなエピソードがあります。月の表面はいったいどのようになっているのでしょうか。
・「クレーター」と呼ばれる月表面の凹凸
月は「あばた面」と呼ばれるほど、表面に凹凸があります。月のくぼみは「クレーター」と呼ばれ、30万個以上も存在するとされています。
一般的に、暗く平らな部分を「海」、ギザギザした明るい部分を「陸」と呼びます。海の部分は反射率が悪いため、「うさぎが餅をついている」ような形状に見えるというわけです。
・月の表面を覆うレゴリス
月や惑星の表面を覆っている堆積物は、「レゴリス」と呼ばれています。岩石由来の粒子、天体の衝突で生まれたガラスや粉末などから構成されているレゴリス。粒子の大きさによって「ソイル」や「ダスト」という呼称で分類されています。
有機物を含まない、磁気を有しているなど、地球の土壌とは異なる性質があります。
・水の有無
月には大気がないため、化学組成が地球とは異なるといわれてきました。アメリカのアポロ計画でも、月には水がないと報告されています。
しかし近年、NASAによって「南極や北極、あるいは月面全体に水が存在する可能性」が指摘されました。これからの月の研究が待たれます。
6. 月と人類
月は人類が足を踏み入れた唯一の天体。月の探査は、1950年代からアメリカと当時のソ連の先導で開発が進められてきました。なかでも有名なプロジェクトを解説します。
・アポロ13号で有名な月面着陸計画
映画『アポロ13』で有名なアポロ計画。1961年に、アメリカによって発表されました。「1960年代終わりまでに月面に人間を着陸させ、安全に地球に戻すこと」。これがアポロ計画の目標です。
アポロ計画は当初、無人での実験が繰り返されました。1968年10月、初の3人乗りの宇宙船がアポロ7号として大気圏突入に成功。1969年7月に月に向かったアポロ11号によって、人類による初の月面着陸が遂行されました。
映画で有名なアポロ13号は、1970年4月に打ち上げられますが、機械船内の酸素タンクの破裂という事故が発生。全世界が見守る中、3人の宇宙飛行士は無事に地球に帰還しています。
アポロ計画は1972年12月のアポロ17号まで続けられ、宇宙開発に貢献しました。
・月に向かう新たなミッション「アルテミス計画」とは
2019年、アポロ計画以来の月面への着陸を目指す計画が、NASAによって発表されました。「アルテミス計画」と呼ばれるこのミッション、2020年10月には8か国がアルテミス合意に署名。日本も参画を表明しています。
月に有人拠点を作ることを視野に入れたアルテミス計画では、2022年11月に飛行船「オリオン」を搭載した「アルテミス1」が打ち上げに成功。2025年打ち上げ予定の「アルテミス3」で月面着陸を目指します。
宇宙飛行船の製造を米スペースX社が担うなど、民間企業も参加して話題になっているアルテミス計画。今後の動向が注目されています。