衛星コンステレーションは宇宙のインフラ革命?地球を覆う小さな星々にできること

衛星コンステレーション

――空を見上げたら、頭上にあるのは星ではなく小型の衛星だった!

そんな未来が、もう始まっています。

宇宙を舞台にした通信インフラの主役として注目を集めている「衛星コンステレーション」。
数百から数千もの小型衛星で地球全体をカバーし、通信インフラの未整備地域や災害時に応用できるシステムは、すでにSpaceXや楽天の主導でスタートを切っています。

通信だけではなく、放送や天体の観測など、衛星コンステレーションが目指すものは多岐にわたります。

衛星コンステレーションとはいったいどのようなものなのでしょうか。
開発から現状、そして未来予測まで、衛星コンステレーションについてわかりやすく解説します。

1. 衛星コンステレーションとは

衛星コンステレーションとは、いったい何を指すのでしょうか。
これまでの衛星との違いや、具体的な実例をあげて解説します。

衛星コンステレーションの定義

まずは「衛星コンステレーション」の定義から。

衛星コンステレーションとは、「複数の人工衛星を連携させてひとつのサービスや機能を達成する方法」のことです。

「コンステレーション」とは英語で「星座」のこと。
複数の小型の衛星が、星座のような形になることからこう呼ばれています。

衛星コンステレーションとこれまでの衛星との違いは?

衛星コンステレーションは、従来の衛星とどこが違うのでしょうか。

これまでの衛星は、国の主導で作られる数トン級の大きさが主流でした。
これらの大型の衛星は、3万6,000kmの静止軌道にあるため、通信範囲に限りがありました。

一方、衛星コンステレーションを構成する小型衛星は100g~800kg。
これらの小さな衛星が低・中軌道に乗せられ、地球を周回します。小型衛星同士が互いに通信することで、全世界をカバーできるネットワークが完成するわけです。
さらに、小型衛星を次々と追加することで、高頻度の通信も可能になるといわれています。

衛星コンステレーションの代表例

まるで未来のお話にも聞こえる衛星コンステレーション。
実はもういくつかのプロジェクトがスタートしています。その代表例をご紹介します。

① スターリンク(SpaceX)
スターリンクは、イーロン・マスク率いるアメリカのSpaceX社が進めている巨大プロジェクト。500km~1,200kmの3種類の軌道に、1万2,000個以上の小型衛星を配備。地球の全域に、高品質な通信環境を提供するシステムです。
2022年10月からは、アメリカとヨーロッパにつづき日本でもサービスが受けられるようになりました。

スターリンクは、SpaceX社が製造した人工衛星を使ってサービスを提供している点が特徴。宇宙インフラを自社で構築し、通信サービスを提供するという新しいビジネスモデルを生み出したところが画期的です。

② 楽天 × AST SpaceMobile
衛星コンステレーションの計画は、日本も負けていません。
楽天のアメリカのAST SpaceMobileが協力して推進するプロジェクトが、2023年4月に発表されました。

楽天のプロジェクトの最大の特徴は、「特別なアンテナや機器を購入しなくても、通常のスマホで衛星通信が利用できる」という点です。
「電波が入らない場所をなくす」ことを目標にしたこのプロジェクトによって、山奥や海上、電波が届きにくい建物のなかでも通信サービスが受けられるようになります。

実際にサービスが開始されるのは2026年頃の予定。
多数の衛星を軌道に乗せる必要があるため、ネットワークの構築に数年を要するといわれています。

2. 宇宙民営化の流れ

宇宙民営化の流れ

衛星コンステレーションの開発や実施を担っているのは、SpaceXや楽天をはじめとする民間企業です。
かつては国家の威信をかけて行われていた宇宙開発は、なぜ民営化されていったのでしょうか。

国家主導だった宇宙業界

かつて宇宙関連の開発といえば、アメリカのNASAや日本のJAXAが中心でした。開発から実験、運用の全工程を、国の機関が担っていたのです。

国が主導して作る大型衛星は、1機種の開発に数百億円という規模のコストがかかります。
同じタイプの人工衛星を複数製造することはほとんどなく、通常は1点もの。つまり製造プロセスは自動化されることもほとんどありませんでした。

開発期間も5年から10年を要するなど、長期を要するのが普通だったのです。

「小型衛星コンステレーション」の概念が生まれたのは1980年代

「小型衛星コンステレーション」というコンセプトは、1980年代からアメリカですでに検討されていました。しかし、人工衛星製造の技術がアイデアに追いつかなかったという事情があります。

2000年代に入り、通信技術が急速に発展。搭載機器の小型化や軽量化などの技術革新が起こりました。数百キロほどの高性能小型衛星を、短期で開発し、製造できる時代に突入したのです。

この動きに拍車をかけたのは、IT関連で巨額の富を得た起業家たち。彼らが宇宙産業に着目したことが、大きな転換点になりました。

2002年にはイーロン・マスクがSpaceXを設立し、2004年にはジェフ・ベゾスがブルーオリジンを設立。人工衛星製造のプロセスは、宇宙に夢を抱く起業家たちによって、新たなフェーズに入ったのです。

2010年代以降、政府が率先して民間企業の顧客に

国主導の宇宙開発には長い時間がかかるのに対し、民間企業はコストを削減するなどの効率化が顕著。ライバルたちとの競争に晒されているため、ロケットを再利用したり、多少のリスクも投資を理由にトライできたりと、メリットが多数あります。

これに目をつけたアメリカ政府は、民間企業に積極的に契約を与えて、彼らの技術の活用を狙うようになりました。

たとえばNASAは、宇宙飛行士の宇宙への輸送をSpaceXに委託。理由はコストにあります。
スペースシャトル打ち上げには約15億(約2,200億円)ドルかかるのに対し、SpaceXのクルードラゴンならば1席7,200万ドル(約105億円)。実に数分の1のコストで輸送が可能になったのです。
トランプ政権下、苦しい運営を余儀なくされているNASAにとって、貴重な財源を研究や技術革新に集中化できるのは、大きなメリットといえるでしょう。

国がすべての工程を担った過去と異なり、現在は「民間が提供し、国が利用する」という構図が鮮明になってきました。

民間企業による衛星コンステレーション計画がぞくぞくと

政府が率先して顧客になったことで、民間企業は製品や技術の開発がより容易になりました。こうした状況を受けて、SpaceXのスターリンクや楽天 × AST SpaceMobile以外の計画も発表されています。

・OneWeb
イギリスを拠点にする衛星コンステレーション計画。
スターリンクより規模は小さめながら、法人や公共インフラに特化したサービスを提供予定。
648個の小型低軌道衛星でネットワークを構築します。

・Amazon : Project Kuiper
Amazonによる低軌道衛星コンステレーション計画で、3,000個を超える衛星が使用される予定。
ブルーオリジンの技術力も駆使し、アマゾンの経済圏拡大などが目的。

3. 衛星の種類

衛星の種類

衛星コンステレーションにはどんな衛星が使われているのでしょうか。
種類別に解説します。

用途別に見る衛星の種類

まずは用途別に衛星の種類を解説します。

① 通信・放送衛星
インターネット通信やテレビ中継に使用される衛星のことです。通常の通信ネットワークとなるほか、災害時の緊急連絡手段としても活躍。地上にネットワークを設備するよりもコスト面や安全面でのメリットが大きく、衛星コンステレーションの主目的となっています。

② 地球観測衛星
地表を観察したり撮影したりする衛星のことです。気象予報や台風の進路予測、防災、農業のモニタリングなど、生活に密着した情報を得ることが目的です。地球環境の監視のためにも一役買います。

③ 測位衛星
移動中の船舶や航空機、車両などに対して、正確に現在位置を知らせる衛星のことです。アメリカのGPSやヨーロッパのガリレオが実例。カーナビやスマホでもお馴染みの機能です。

軌道別に見る衛星の種類

次は、軌道別に衛星の種類を見ていきましょう。

① 低軌道(200〜2,000km)
通称はLEO(Low Earth Orbit)。
地球に近い軌道を回ります。1周およそ90分と高速。
地表から近いため「高解像度での観測」や「低遅延通信」が可能です。
ただし見える範囲が狭いので、地球全体をカバーするには何百から何千もの衛星が必要になります。
スターリンクやOneWebがこの方式。

② 中軌道(約2,000〜36,000km)
通称はMEO(Medium Earth Orbit)。
低軌道と静止軌道の中間にあたり。GPS衛星は代表例です。
高度が高めなので、少ない衛星数で広い範囲をカバーできます

③ 静止軌道(約36,000km)
通称はGEO(Geostationary Earth Orbit)。
地球の自転と同じ速さで周回します。
テレビ放送や国際通信に広く利用されており、数機で地球全体をカバー可能。
ただし距離が遠いため通信の遅延があり、解像度にも限度があります。

4. 低軌道衛星コンステレーションのメリット・デメリット

低軌道衛星を使った衛星コンステレーションシステムは、魅力と課題が表裏一体になっています。
衛星コンステレーションのメリットとデメリットを解説します。

メリット

衛星コンステレーションには、数多くのメリットがあります。
分野別にまとめると、このような感じになります。

・通信・放送分野
災害や未整備地域でも通信可能。遅延が少なく大容量通信が可能

・地球観測分野
高解像度観測や高頻度のデータ収集が可能

・測位分野
GPSなど既に運用中。今後は高精度化に期待大。

デメリット

メリットが多い一方で、デメリットとも無縁ではありません。
衛星コンステレーションには、次のような課題が残されています。

・初期投資が膨大
数千〜数万基規模の小型衛星を製造するには、巨額の費用が必要になります。文字通り軌道に乗せるまでのコストは、生半可なものではありません。

・ランニングコストが膨大
場合によっては数千におよぶ小型衛星の運用・監視は、複雑で高コスト。軌道に乗せた後も、コンスタントに費用が掛かります。

・宇宙デブリの問題
いわゆる宇宙ゴミの問題です。廃棄衛星が増え、衝突リスクも高くなります。宇宙ゴミの処理技術はまだ遅れており、今後の大きな課題になっています。

5. 衛星コンステレーションが切り開く未来!これから期待できること

衛星コンステレーションが切り開く未来

さまざまな課題を抱えているとはいえ、大きな将来性を持っている衛星コンステレーション。
今後はさまざまな分野での活用が期待されています。

期待される今後の活用分野

衛星コンステレーションの主目的は、通信や放送です。
今後は、農業、物流や新エネルギー、防災など、幅広い分野での活用が期待できます。
地球環境をより精緻に把握できたり、地球のあらゆる場所で通信が可能になったり、いくつもの夢の実現が待たれます。

生活への影響

衛星コンステレーションによって、地球に住む人びとの生活の改善が期待されます。
ネットワーク格差の解消、産業の効率化、次世代型サービスの迅速な普及など、世界規模の問題のいくつかは、衛星コンステレーションによって解決できる可能性があります。

宇宙空間でも求められるSDGs

持続可能な社会は、もはや全世界共通のテーマ。
衛星コンステレーションが普及することで生まれる宇宙デブリに関しても、SDGsの観点から技術を開発していく必要があります。衛星の寿命管理や除去技術の開発が急がれます。

より利便性の高い社会の実現と、地球をはじめとする宇宙の環境を守る取り組み。
これらが歯車のように噛み合って開かれる未来がきっとあるはず!

そうした未来を信じて、技術開発の歩みを見守りましょう。

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