サイエンスからビジネスへ!宇宙を旅行する日も遠くない?

宇宙船

私たちがアニメや映画や小説のなかで見てきた宇宙旅行。21世紀に入り、宇宙への旅行は架空の世界のお話ではなくなりました。1950年代から始まった宇宙探査の流れは、今世紀に入って加速。宇宙はサイエンスだけではなく、ビジネスの対象として大いに注目を浴びています。

そのなかでも話題になることが多い宇宙旅行(スペース・ツーリズム)。訓練された宇宙飛行士だけではなく、一般人も宇宙旅行する日が来るのでしょうか。
官民一体となって進められている宇宙旅行計画の「今」をお伝えします。

1. 宇宙旅行の魅力

多くのSFファンタジーに登場するように、宇宙には人々を惹きつける魅力があります。
宇宙旅行でぜひ味わいたいワクワク体験には、どのようなものがあるのでしょうか。

無重力体験

宇宙旅行といえば無重力体験。重力から解放され、宇宙船内は重さのない世界になります。
空中に浮遊する体、水など、まさに映画で見た世界が体験できます。

地球を宇宙から見られる

人類が初めて宇宙から地球を見たのは、1961年のこと。旧ソビエト連邦の宇宙飛行士ガガーリンが「地球は青かった」と語ったエピソードは有名です。写真や図鑑でしか見られなかった地球、宇宙旅行では実際に自分の目で見ることができます。人生観にも影響を与えそうな経験になりそうです。

2. 何キロから宇宙?

大気圏

宇宙旅行について考える前に、まずは宇宙についておさらい。
地球と宇宙に境界線はあるのでしょうか。宇宙旅行における宇宙の概念を説明します。

宇宙はどこから?

国と国の間に国境があるように、地球と宇宙の間にも境があるのでしょうか。
地球の地上から宇宙までは、途切れることなく続いています。どこからが宇宙という定義はありませんが、国際航空連盟は高度100km、アメリカ空軍は高度80kmからを「宇宙」と定義しています。

地球をとりまく大気圏とは

対流圏では大気が混合されやすく、さまざまな気象現象が生まれます。高度20~60kmにある成層圏はオゾン層があり、地球上の生物を紫外線から守る役割が。
高さ約90~550kmが、中間圏と熱圏。窒素や酸素が解離して原子となり、いくつかの電離層を形成しています。オーロラが出現するのはこのあたりです。

3. 宇宙旅行に必要な準備

いざ宇宙旅行が実現!となった場合、どんな準備が必要なのでしょうか。
具体的な旅行準備を解説します。

健康状態や訓練の必要性

宇宙は地球とはまったく違う環境条件にあります。健康であるだけではなく、不測の事態が発生したときのために、宇宙に関するさまざまな知識を学ぶ必要があります。

宇宙旅行前に行われるトレーニングの概要

宇宙旅行前に行う具体的なトレーニングは、一般的に座学や適性試験、実施訓練で構成されます。  

座学では、宇宙服の知識、搭乗機に関する知識など、安全の確保を目的に学びます。適性試験では、微小重力状態になるパラボリック飛行や、軍用機でのアクロバット飛行に参加することになります。  

もちろん脱出訓練もあり、トレーニングは決して簡単ではありません。

宇宙服や持ち物リスト

宇宙旅行に何を持っていくのか、想像もつきません。
下着や衣服は、とにかく機能性重視。素材についてはあらかじめ専門家に尋ねて、安全を確保する必要があります。

また宇宙では水が使えないため、水が不要な衛生用品を用意する必要があります。紫外線が強いこと、乾燥していることを想定して、肌を守るクリームなどの必要です。

また宇宙でしてみたいこと、音楽を聴きたいとかゲームをしたいなどの娯楽のためのアイテムもぜひ。

4. 宇宙旅行にかかる費用とプラン

大気圏

宇宙旅行を夢見る人にとって気になるのはそのお値段。
宇宙旅行を企画している企業、宇宙旅行にかかる金額を見ていきましょう。

申し込み可能な宇宙旅行の種類

現在、申し込みができる宇宙旅行の種類はいくつかあります。

① サブオービタル飛行(弾道飛行)

宇宙と定義される高度100kmほどまで上昇し、数分間無重力状態を体験して地球に戻るタイプ。アトラクション感覚の宇宙旅行で、価格は数千万単位から。企画しているのは、ヴァージン・ギャラクティック、ブルー・オリジン、PDエアロスペースなど。

② 地球周回旅行

地球を1周する軌道で数日間宇宙に滞在。地球をパノラマで見られるのがメリット。スペースXが企画中。

③ ISS滞在旅行

国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する旅行。宇宙飛行士の指導の下、無重力生活を楽しむのが目的。スペースXやアクシオム・スペースによって企画。

スペースXの「スターシップ」計画

宇宙旅行といえばスペースX。新トランプ政権でも要職を担う実業家イーロン・マスク氏が運営する企業です。

マスク氏は、月面着陸を目指すアルテミス計画にも参画しており、宇宙ビジネスの先端を行く人物。彼が運営するスペースXの「スターシップ」は、国際宇宙ステーションに滞在する旅行をプロジェクトの目玉にしています。

今のところ費用は5000万ドル(約78億円)。マスク氏は、コストの削減も目指し、最終的には1000万ドル(16億円弱)にまで抑えたい考えなのだとか。

ブルー・オリジンの「ニューシェパード」

イーロン・マスク氏と双璧をなす実業家ジェフ・ベゾス氏は、アマゾンの創始者。彼は、マスク氏より早く2000年に、宇宙に関連する企業「ブルー・オリジン」を立ち上げました。ブルー・オリジンによって開発された有人宇宙船ニューシェパードが、宇宙旅行でも使用される予定。高度107kmまで到達し、数分間の無重力状態を体感したあと、地球に帰還する計画です。

ブルー・オリジンは、現在のところ宇宙旅行の価格を明確にしていません。当初の予定では、20万ドル(約3000万円)といわれていましたが、競合相手の価格を見ながら、設定されることになりそうです。

ヴァージン・ギャラクティックのサブオービタル飛行

宇宙ホテルの登場

航空会社ヴァージン・グループが手掛ける「ヴァージン・ギャラクティック」。航空業の実績があるヴァージン・ギャラクティックが手掛ける宇宙旅行が、現在はもっとも具体性の高いプロジェクトとされています。

2023年6月に、有人宇宙船にイタリア空軍に属する2人とヴァージン・ギャラクティック配属の宇宙飛行士が乗り込み、高度85kmに達し、約70分の飛行に成功。ヴァージン・ギャラクティックの旅行も、スペースXのような滞在型ではなく、サブオービタル飛行で地球に戻ります。宇宙船といっても、外観は飛行機とよく似ており、この点も初めての宇宙旅行としてはハードルが低い感じです。

ヴァージン・ギャラクティックの宇宙旅行にかかる費用は45万ドル(約7000万円)。すでに予約数が800を超えているのだとか。

いずれも富裕層のみの特権となりそうですが、今後の技術開発の如何によっては価格が下がる可能性もあります。

5. 宇宙旅行の未来

日進月歩のテクノロジーによって、宇宙旅行は夢ではなくなりました。今後、宇宙旅行の分野にはどのような未来が待っているのでしょうか。 いくつかの展望を解説します。

宇宙ホテルの登場

国際宇宙ステーションは、将来的に民営化が予定されています。民間企業によるホテルの建設が行われれば、旅行客は宇宙を眺めながらゆったりと過ごせるというわけです。

予定されている宇宙ホテル「ボイジャー・ステーション」は、車輪のような形状。遠心力によって小さな重力を生み出し、エンタメ性も抜群の施設になりそうです。

オーロラ・ステーション

国際宇宙ステーションからオーロラが観測できることは、NASAなどの報告でも確認され、話題になっています。オーロラ観測ができるオーロラ・ステーションができれば宇宙旅行の観光名所になりそうです。

宇宙エレベーター構想

宇宙船やロケットの輸送には、そのたびに莫大なコストがかかります。そこで低コストで宇宙と地球の行き来ができる「宇宙エレベーター構想」も生まれています。段階によってさまざまな重力ポイントが設置され、宇宙旅行のハードルを下げてくれる期待大。

想像上の一アイデアに過ぎなかった宇宙エレベーター、近年のカーボンナノチューブの開発で現実味を帯びてきました。

月や火星への旅行の可能性

宇宙旅行といえば、ほかの惑星にも行ってみたいというのが自然の欲求です。月への旅行は、すでにスペースXが企画を始めています。36万キロ離れた月に向かい周回し、1週間ほどで地球に戻るプラン。アポロ計画以来の月面着陸プラン、アルテミス計画進行中の現在、月旅行の注目度は大きいものがあります。

火星に関しては、研究者たちが有人火星探査を模索中。宇宙旅行先としてはまだ少しハードルが高い感じです。

6. まとめ

宇宙資源エネルギーや宇宙への輸送計画など、世界を牽引する企業家の多くが、宇宙に焦点を当てたビジネスを展開しています。

宇宙旅行もそのひとつ。すでに安全を確保し、予約を受け付けている企業もあります。 神秘的な宇宙を自分の目で見ることができる未来が、まもなくやってきます!

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