GPSの誤差はなぜ起こる?原因とGNSS・RTKによる高精度測位の仕組みを解説
カーナビやスマホの地図アプリは、GPSの技術が導入されています。GPSはもはや、現代社会に欠かせないインフラとなりました。
しかし実はGPSには、数メートルから数十メートルの誤差が生じることをご存じでしょうか。
日常生活では気にならないGPSの誤差も、建設や測量などの産業現場では、精度や安全性に直結する深刻な問題になります。
では、なぜGPSには誤差が生まれるのでしょうか。
宇宙開発に端を発するGPSの歴史をたどりながら、高精度測位技術「GNSS」「RTK」の仕組みをわかりやすく解説します。
また、高精度GNSSを現場へ導入する選択肢として、世界のプロが注目するGNSS受信機「EMLID(エムリッド)」もあわせてご紹介します。
1. GPSはなぜここまで普及したのか?-衛星測位技術の始まり

現在、GPSの技術は、私たちの日常生活で欠かせないものになっています。
GPSの誕生は、冷戦時代の宇宙開発と深く関連しています。その歴史をたどりながら、特徴と課題を解説します。
生活に溶け込んだGPS
スマホの地図アプリで目的地を調べる、カーナビで渋滞を避ける、タクシーを呼ぶ、ランニングの距離を記録する――こうした日常的な場面で使われているのが、GPSの技術です。
これらのサービスは、複数の人工衛星から送信される信号を受信し、それをもとに距離を測定することで、地球上のどこにいるかを瞬時に導き出す仕組みになっています。
この便利なツールの生みの親は、宇宙開発にありました。
GPSの始まりは冷戦時代の"宇宙開発"
GPSとは、「Global Positioning System」の略。一般的に「全地球測位システム」と訳されます。
GPSの原点は、1950年代の冷戦期に起こった米ソの宇宙開発競争にありました。
1957年に旧ソ連が世界初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げると、アメリカの研究者はその電波を解析することで、地上の正確な位置を測定できることに気づきました。これが衛星測位の始まりです。
その後、米国防総省が開発を進め、1970年代から「GPS」の構築がスタート。当初は軍事機密扱いでしたが、1980年代以降に民間へ開放されました。2000年に精度制限が解除されて以降は、カーナビやスマホへと繋がる劇的な普及を遂げたのです。
「GPSは正確」という思い込みと、現実の誤差
これほど身近になったGPSですが、問題点も抱えています。それは、私たちが普段利用しているGPSには、常に数メートルから数十メートルの「誤差」が潜んでいる、という点です。
日常生活の地図アプリであれば、数メートルのズレがあっても目的地には問題なく到着できます。
しかし、建設現場での作業や土地の測量、ドローン運用といった産業用途のシーンでは、この数メートルのズレが、作業の停滞や衝突事故といったリスクに直結します。
宇宙から始まった測位技術は今、地上で「センチメートル単位の極限の精度」が求められる新たな課題に直面しているのです。
2,GPSの誤差はなぜ起こるのか?

産業用途で致命的な問題となるGPSの「ズレ」。
なぜ宇宙からの電波を頼りにすると、数メートルもの誤差が生まれてしまうのでしょうか。位置を特定する基本的な仕組みと、誤差を生み出す4つの原因を解説します。
GPSはどうやって「今いる場所」を割り出すのか
まず、GPSが私たちのいる場所をどのように割り出すのか、そのシステムを見てみましょう。
GPSは、約2万キロメートル上空の人工衛星が発する電波信号を利用します。衛星から届くまでの時間を計ることで「衛星までの距離」を算出し、複数の衛星からの距離が重なり合う交点を計算することで、現在地を割り出しています。
①衛星との距離を測る
衛星は常に「自分の位置」と「今の時刻」を電波で発信しています。受信機はその電波が届くまでの時間を計測し、光速(秒速約30万km)をかけることで、衛星までの距離を計算します。
②複数の衛星で絞り込む
1機の衛星との距離がわかっても、「その衛星を中心とした球面のどこか」までしか特定できません。そこで複数の衛星との距離を同時に計算し、それぞれの球面が交わる1点を割り出します。
緯度・経度・高度の3次元位置を特定するには最低3機必要ですが、受信機内の時計のズレも補正するため、実際には4機以上の衛星を使います。
GPS誤差が発生する主な原因
GPSの仕組み自体はそれほど複雑ではありません。しかし、宇宙から地上までの約2万キロメートルという距離の中で、電波の「わずかな遅れ」が生じます。これが数メートルの誤差を生む原因となります。
主な要因には以下の4つがあります。
・電波の大気影響(電離圏・対流圏での遅れ)
地球を包む大気圏には、「電離圏」や「対流圏」と呼ばれる層があります。
電離圏は大気の上層にあり、電波を通過させる際に速度を変化させます。
対流圏は地表から8km~17kmのところにあり、日射による対流を生む場所です。
これらの層を通るとき、電波のスピードがわずかに遅れてしまいます。光の速さで進む電波にとって、1億分の1秒の遅れが数メートルのズレに化けてしまうのです。
・ビル反射(マルチパス)
周囲のビルや山の斜面に電波が反射し、遠回りして受信機に届く現象です。受信機は「反射した分だけ距離が離れている」と勘違いするため、位置のズレを生み出してしまいます。
・衛星との距離誤差(軌道のズレ)
衛星自体がわずかに予定の軌道から外れたり、衛星に搭載された時計に微細な狂いが生じたりすることで、距離の計算に狂いが出ます。
・受信機自体の性能
スマートフォンのアプリは、本体を受信機(アンテナ)として使います。小型で省電力化を最優先した受信機は、ノイズ(電磁波の乱れ)を除去する能力に限界があり、計算誤差が避けられないのが実情です。
なぜ産業用途ではGPSの誤差が問題になるのか
一般消費者のナビゲーション(地図アプリなど)では、数メートルの誤差はそれほど大きな問題ではありません。しかし、産業用途ではこのズレが「致命的」な不備に直結します。
・建設・土木関連
境界の決定や精密なマッピングが必要になる建設現場では、 数メートルの誤差は大きな影響を与えます。従来のGPSでは、センチメートル単位の精密な位置決めができません。施工ミスの原因となり、工期や工費に影響します。
・ドローン関連
ドローンは、自動航行中に数メートルの誤差が生じると、予定ルートを外れて近隣の建物や電柱に衝突する事故リスクが高まります。
ドローンを使った写真測量では生成される3Dモデルが歪んでしまい、データとして使い物にならないことも。またドローンによる農薬散布も、誤差が生まれることで、農薬が均等に行き渡らない可能性があります。
・農業関連
トラクターの自動運転において数メートルの誤差が出ると、走行車線を的確に捉えられず、種まきや肥料の散布に重複や欠落が発生する可能性が出てきます。結果、収穫量や品質に悪影響を及ぼします。
3,GPSとGNSSの違いとは? -なぜGNSSは高精度なのか

スマートフォンやカーナビの位置情報機能として、誰もが当たり前のように使っている「GPS」。しかし、プロの測量やドローン運用の現場では、GPSではなく「GNSS」という言葉が頻繁に使われます。
一般にはあまり馴染みのないこの言葉ですが、実は現代の高精度測位を支える非常に重要な役割を果たしています。
GPSとの違いを解説しながら、GNSSの特徴を解説します。
GPSはアメリカ生まれの単一システム
私たちにはお馴染みの「GPS(Global Positioning System)」は、実はアメリカ政府(国防総省)が開発・運用している、単一の衛星測位システムの名称です。
1980年代に世界で初めて民間へ一般開放後、劇的に普及した歴史があるため「人工衛星を使った位置測定=GPS」という認識が世の中に広く定着しました。
しかし、地球の周りを回って位置情報を送っている衛星は、アメリカのGPS衛星だけではありません。
GNSSは「世界各国の衛星」をまとめた総称
一方、「GNSS(Global Navigation Satellite System)は、「全球測位衛星システム」と訳されます。アメリカのGPSを含む、世界各国の測位衛星システムを総括したものです。
現在、主要なGNSSには以下のような各国のシステムがあり、産業用の機器はこれら複数のシステムを同時に受信しています。
GPS: アメリカ
GLONASS: ロシア
Galileo: 欧州(EU)
BeiDou: 中国
みちびき(QZSS): 日本
GNSSによって向上する「安定性」「精度」「継続性」
GPSという単一のシステムではなく、GNSSとして複数の衛星を同時に利用することで、測位の質が劇的に向上します。
具体的には、以下のような長所があります。
・電波が途切れない(継続性・安定性の向上)
ビル街や山間部のような場所では、特定の方向にあるアメリカのGPS衛星の電波が、建物や山に遮られてしまうこともしばしば。結果、通信が途切れることがよくありました。
しかし、あらゆる国の衛星をカバーしていれば、「アメリカの衛星が隠れても、真上にある日本の『みちびき』や、別の角度にある『Galileo』の電波で補う」といったことが可能になります。
特定のシステムに不具合が生じたり、一部の衛星が遮られたりしても、他のシステムの衛星で補うことができるため、中断することなく測位を続けることが可能です。
・計算が狂わない(精度の向上)
位置情報を計算するためには最低4機以上の衛星が必要です。受信できる衛星の数が多ければ多いほど、計算の補正が働くため、位置の割り出し精度がアップすることになります。
4,なぜ産業用途では"高精度測位"が必要なのか

スマートフォンによるナビゲーションから、ドローンによる測量まで、衛星による位置情報技術は、現在の私たちの生活に欠かせないものになりました。
なぜ、産業現場ではセンチメートル級の精度が求められているのか、その理由を解説します。
「数メートルのズレ」が現場では大きな問題になる
産業用途における位置情報は、単なる目安ではなく、安全性や製品の品質を守るための基準です。
スマートフォンの位置情報ならば、数メートルのズレは「道を1本まちがえた」程度で済みますが、産業現場でのズレは、事故や施工ミスの原因となってしまいます。
建設・測量業界で進む"位置情報のDX化"
現在、建設業界では国土交通省が主導する「i-Construction」や「ICT施工」といった取り組みにより、現場のデジタル化(DX)が劇的に進んでいます。かつては職人の「経験と勘」に頼っていた現場作業が、精密な位置データを基盤とした効率的なシステムへと移行しつつあります。
具体的には、次のような技術が導入されています。
・ICT施工
国土交通省が推進する「i-Construction」の柱となる施策です。
ICT施工は、建設生産プロセスのあらゆる段階において、ICT(情報通信技術)を全面的に活用する工事を指します。
ドローンによる3次元測量や、3次元設計データなどを使用し、建設機械を自動制御(建機自動化)。従来の手作業による時間や手間を大幅に削減し、精度と生産性を同時に高めることができます。
・BIM/CIM
デジタル化の中核となっているのが、BIM/CIMです。
建設プロジェクトの計画・設計から施工・維持管理まで、すべての工程を「3次元モデル」で一元管理する仕組み。関係者がリアルタイムで同じデータを共有できるため、ミスや手戻りが大幅に減り、工事の効率と安全性が向上します。
BIM/CIMで作った3次元設計モデルを現場で正確に再現するには、建機や測量機器がセンチメートル単位で位置を把握している必要があります。
ドローン測量・インフラ点検を支えるGNSS
ドローンによる測量やインフラ点検の現場でも、GNSSの精度が作業の質を左右します。
ドローンの写真測量による3D地形生成では、撮影画像に緻密な位置情報を紐付けるためにGNSSが不可欠です。
また、橋梁点検や太陽光設備点検、災害調査といった作業では、ドローンが自律飛行しながら、決められた点検箇所を正確になぞる必要があります。それを可能にするのが、GNSSの精度なのです。
"高精度測位"は新しい産業インフラ
GNSSの活用は、建設・測量にとどまりません。さまざまな自動化のために必要なインフラとなりつつあります。
たとえば、自動運転バスや自律走行型の配送ロボットは、人材不足の昨今とくに注目されている分野です。車道や歩道の位置をしっかり把握して走行する必要があるため、精密な位置情報が不可欠です。
農業の分野では、トラクターの自動操舵やドローンによるピンポイントな農薬散布が可能に。GNSSの技術によって、重複やムダを省くことができます。
さらには、高所や危険地帯での作業を安全に行うための無人化施工にもGNSS技術が導入されます。
だからこそ"高精度GNSSの受信"が求められる時代に!
日常生活にとどまらず、産業のあらゆる場面で精密な位置情報が必要とされる今、その土台となる高精度なGNSS信号の受信。
高精度GNSSの受信機こそが、次世代産業を支える必須のインフラとなる時代に入っています。
5,高精度GNSS受信機が変える現場の未来
産業現場における「数メートルの誤差」は、許容できない課題。
その解決策となるのが、センチメートル単位の精度を実現する「高精度GNSS受信機」です。
なぜ今、多くのプロがこの技術を現場に導入しているのか。その理由と、産業の未来について解説します。
高精度GNSS受信機とは
私たちが使うスマートフォンに搭載されているGPS受信機と、高精度GNSS受信機の違い。それは、測位の精度と利用する衛星数にあります。
スマホの受信機は、省電力化を優先するため、建物や樹木で反射したノイズを拾いやすく、誤差が生じやすいのが特徴。一方の高精度GNSS受信機は、世界各国の衛星(GNSS)信号を同時受信できるだけでなく、アンテナ自体がノイズを除去する強力なフィルターを備えています。
なによりも、次項で解説する「RTK測位」に対応している点が、スマホとは根本的に異なります。
RTKとは?――センチメートル級測位を可能にする技術
RTK(Real Time Kinematic:リアルタイム・キネマティック)は、通常の測位精度を劇的に向上させる技術です。
衛星からの測位信号に加え、近くに設置した地上基準局の補正データをリアルタイムで組み合わせることで、センチメートル単位の精度を実現。農業機械や建設機械の自動制御など、高い位置精度が求められる現場で広く活用されています。
"精度"だけでは不十分?受信機に求められるさまざまな条件
過酷な環境もまれではない屋外での作業。高精度GNSS受信機には、精度以上のものが求められています。
・持ち運び・設置の簡易化
険しい地形や構造物のそばでも扱えるよう、軽量・コンパクトであること、また三脚を立てる手間を省く「傾斜補正機能(IMU)」などが重要視されます。
・通信安定性
補正データが途切れないための通信安定性が必須です。
・バッテリー性能
1日連続して使える長寿命のバッテリーが求められます。
・耐久性
屋外で使用するにあたり、雨や砂塵、衝撃に耐えうる品質が必要です。
ドローン・測量・建設分野で導入が進む高精度GNSS受信機
高精度GNSSは、すでに多くの産業現場で実用化され、業務効率を劇的に高めています。
使用される主な理由は、こちらの通り。
ドローン: 精密な写真測量や3D地形モデル生成
建設: ICT施工における建機の自動制御、施工管理
測量: 境界確定や現況測量における高効率化
宇宙技術が"地上インフラ"になる時代へ
軍事や宇宙開発の技術は、かつては限られた分野で活用されるものでした。しかし現在、衛星測位は、地上産業を支える不可欠なインフラへと進化しました。
高精度GNSSは、現場のデジタル化を支える基盤技術として、私たちの働き方を根本から変えるといっても過言ではありません。
高精度GNSS受信機という選択肢
RTK技術の進化により、かつては大規模な測量機材が必要だったセンチメートル級の測位が、今では非常にコンパクトな機器で実現できるようになりました。
「手軽さ」と「高精度」の両立が、建設DXやドローン活用の現場で急速に導入が進んでいる理由です。
現場のDXを加速させ、作業のあり方を根本から変える高精度GNSS受信機。
その中でも、高い運用性と精度のバランスで世界中のプロから注目を集めているのが「EMLID」シリーズです。
小型で高性能の「EMLID」は、高精度測位を現場に導入したい場合の最適な選択肢。
センチメートル級の精度、傾斜補正(IMU)、アプリ操作を備え、優れたコストパフォーマンスを発揮します。
クラウド同期により、現場とオフィスとの連携も簡単。プロ級の精度を、低コストで導入できます。
最後に
日常生活に浸透したGPS技術。GPSによる誤差は、日常生活では気にならなくても、産業現場では安全性や品質に直結する問題です。その解決策として生まれたGNSS・RTK技術は今、建設・測量・農業・ドローンなど、あらゆる産業のインフラとなっています。
高精度GNSS導入を検討する際は、機器の精度・耐久性・サポート体制を総合的に見極めることが重要です。KosMosでは、現場のニーズに合った製品選定をご支援します。
取り扱い製品
EMLID|高精度GNSS受信機
センチメートル級精度・IMU傾斜補正・クラウド同期対応。建設・測量・農業・ドローン現場に、プロ仕様の高精度測位を低コストで導入できます。
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